御岳の噴火には心底驚いた。まさか御岳が!という感じだった。亡くなられた方のご冥福をお祈りします。
それにしても、被害拡大となる条件がここまで重なってしまったのは驚きだ。まず御岳は100名山であるからもともと登山者が多い。ちょうど土曜日という休日に起こってしまったこと。ちょうど山頂に人が集まっている12時頃に起こってしまったこと。完璧な晴天の日に噴火してしまったこと。もし真夜中に噴火していたらこれほど人的被害はなかっただろうし、あの日の天気が悪かったら、山頂にあれほど人が集まっていなかっただろう。どれか一つの条件が欠ければあんな大惨事にはならなかった。
ともかく、それは起こってしまった。これが山岳遭難の範疇に入るのかわからないが、一人の登山者として山に向かい合っての結果がこれなら、やはり山岳遭難だろう。あの場所に義務で行った人はいないはずだ。自己責任において「好き好んで」行ったのである。登山するものとして今回あらためて思い起こさなければならないのは、
・山は危険地帯であるということ
その山が高い低いにかかわらず、山は危険地帯なのだ。入山してから下山するまで安全などとはありえない。短時間の内に公的な救助組織や医療機関の助けが求められない自然の中では、たとえ足を挫いただけで窮地に陥る可能性がある。亡くなられた方の中には、脚に噴石を受けて行動不能になったケースもあるようだ。それが致命傷でないにもかかわらず、残念ながらあの状況では助からない。
山は危険地帯であるという認識があれば、行動は違ってくる。危険が避けられなのであれば、滞在時間を最小にして危険に会う確率を下げるという発想が出てくる。森林限界を超えた3000メーター級の頂上、しかも活火山であれば、そこは特別危険なポイントではないだろうか?あの時、山頂で昼食の弁当を広げていたという人がいる。おそらくそういう人はたくさんいただろう。その人たちは危険な場所に長く留まってしまった。山は時間が経てば経つほど危険になっていく。今が晴天でもいずれは悪天になるし、これが夏山なら午後になると落雷の危険が高まるのは常識だ。今回は秋山だが、秋は日が落ちるのが早いので行動は早目を心がけねばならない。登山では頂上は全行程の前半にあるほんの通過点だと思うくらいでちょうどいい。山頂に着いたら半分が終わったのではない。頂上は折り返し点ではない。安全地帯に入るまで、留まることなく動いていたほうがいい。
登山の遭難対策において、登っている山が噴火したらどうするかなんてことはほとんど想定されていない。冗談みたいに聞こえるが、
・活火山には登らない
噴火に対して対策が取れず、もし起こったら致命的な結果になるのなら、これだって立派な選択肢だ。今回生還された方の、ザックで頭部を守ったとか火山灰に対して口の周りを覆い呼吸できる空間を作ったといった証言は、貴重な教訓になるだろう。