頚城・鍋倉谷サクラ谷


笹ヶ峰高原の杉野沢橋に車を置き、遊歩道をしばらく歩いてヒコサの滝展望台につく。その先から非常にはっきりした踏みあとが谷沿いに続き、この道はどこまで行ってしまうんだろう?と不安になってきたところ、道から谷が見下ろせるようになったので藪を突っ切って河原に降りた。これでヒコサの滝とそこから続くゴルジュ帯は全部巻いてしまったことになる。
台風が秋雨前線を押し上げてくれたので空は澄みわたっていた。両岸は白樺主体の森、谷は丸い巨岩が連なって、ボルダリングを続けるように遡行する。流れには岩魚が見られる。標高が高いためだろう、水が冷たい。
 幕場に適当と思っていた惣兵ェ落谷の出合は見落としてしまった。いつまでたっても出合が見当たらないので不思議だったのだが、高度、地形図を確認すると通り過ぎてしまったことははっきりしており、低木が覆いかぶさって見落としてしまったと考え、適当な場所を探して1550m付近の河原で幕。
夜は満天の星空となる。天の川に白鳥座が巨大な羽を渡す。飛行機、人工衛星、流れ星が天の川を横切る。あの光、全部星なんだなあと思うとつくづく不思議だ。焚き火のそばを離れがたくて遅くまでまどろんでいるとYさんから声がかかりツェルトにもぐりこむ。暖かく過ごしやすい夜だった。
翌朝も天気は快晴だった。しばらく進むと鍋倉谷本谷とサクラ谷が分かれた(1:1)。出合ではサクラ谷の方の沢床が低いので、一見本谷の方が支流に見えてしまうが地図ではやはり本谷側の流程が長い。本谷に入るとすぐゴルジュ帯になり右に屈曲して5mの滝が現われた。記録では滝をショルダーで越すか右の斜上バンドを登っているようだが、バンドはハーケンの打てない礫のスラブで「ここ登るの!?」という感じ。高巻いたらここはゴルジュなので2時間コースだろう。メンバーのことを考えて本谷はまた今度にし、ルートをサクラ谷に変更した。こちらは明るく開けている。
このサクラ谷だが登山大系等の資料では「高谷尻谷」になっているがここでは地形図の記述に沿う。
先に進むと水が濁ってきて、硫黄が湧き出している場所を見る。そこを過ぎると水は澄んで傾斜も緩くなり、高原を蛇行して流れる小川のようで新鮮な印象だ。こうなっても水は依然として冷たいままだ。雪渓が遅くまで残ることもあるらしい。この流れが高谷池の台地から直接流れてばいいなと思っていたが願いむなしく藪に突入する。忠実に詰めてしまうより右手の高谷尻沢に入れば直接高谷池に上がれるのだろう。鍋倉谷本谷との間の尾根に上がり熊笹、ねまがり竹、シャクナゲ、ハイマツの藪をこぐ。途中草原があらわれ終わりに近づいたリンドウが咲いている。紅葉するにはまだ早い。高谷池ヒュッテから火打山へ続く木道に抜けるとここは妙高と火打という百名山の中間なので登山者がいっぱいだった。
明星荘まで下山した頃になって雨が降りはじめた。最後まで天気がもってくれて本当によかった。山行の締めに小谷温泉に泊まるため乙見峠へ車を走らせる。