新井裕己さんのこと

あー、やっぱり書かずにいられない。先日亡くなった新井裕己さんのことだ。
新井裕己さんのLaboratorism、スポンサーシップのところから。

人間という種の先頭に立って、未知の自然を切り開いていく作業。
野放図に広がるカオスから、明確な意味を紡ぎ出す作業。
一個人の限界を、人類の限界と重ねていく作業。

開拓によって、人と人とが争う単なるスポーツの範疇を超え、自然と人が対峙する芸術の高みに到達するのです。

そこには人生を投げ打つだけの何かがあり、そのエネルギーは多くの人たちに影響してきました。
ライミングもスキーも、スポーツに留まらないカルチャーになりうる所以です。

"Pushing the Limits."
限界を押し進めること。人の限界を押し上げること。一個人の限界=人類の限界だった一個人が、新井さんだったんだろう。山では(日本の山では)、はっきり言ってもうすることは無くなってしまっていた。新井裕己さんが不帰を滑る・・・というか落ちる、雪崩とともに滑り落ちていくYouTubeの映像を見たが、安全の確保なんて望むべくもない行為だ。自分の命を守っているのはただ自分の技術というだけ。山の世界で、谷川岳一ノ倉沢の森田勝の三スラ初登などに比する行為だったと言えるんじゃないか?新井裕己さんはまだやることがあるということを示した。


登山は、時に命の危険を伴う山は、けっして命を弄んでいるわけではない、スリルを楽しんでいるわけではない、命をおもちゃにしているわけではない、登山は愚行ではない。アートとカルチャーになり得るものだ。と、新井さんは力強く言っているようだ。
そんな人が逝ってしまったのはとても悲しい。