雪崩ビーコン比較

ビーコンと言っているのはもう古いんだそうで、今ではアバランチトランシーバーと言うのだそうだ。
どういうものかというと冬山登山やバックカントリースキーに携行する電波発信器で、雪崩に埋まったときも体につけたアバランチトランシーバーが電波を発信し続けている。捜索モードに切り替えることで電波を頼りに埋まった仲間を探し出すことができる。雪崩に埋まると15分以上は生存率が急低下するので、5分以内に見つける、10分以内に掘り出すというのが目標になる。一人だけアバランチトランシーバーを持っていても意味はない。パーティー全員が持っていて扱い方を知っていなければ効力はない。
国産のAB1500というタイプは新品の電池ならば1500時間電波を発信し続ける。冬に遭難して行方不明になっても春までは電池が保つというなんともいたたまれない仕様。外国製のは設計思想の違いか生存中救出を主眼にしている。電池は200〜300時間程度。捜索モードだともっと電池の消耗は早くなる。
おおざっぱに分けるとアナログ式とデジタル式があり、アナログ式はランプの点灯と音の大きさで受信している電波の強さを表し、捜索レンジを狭く切りかえていくことで遭難者の位置を特定していく。デジタル式は、昨今登場する新型はほとんどこのタイプだが、遭難者までの距離や方向を表示してくれる。複数人が雪に埋まっていた場合も捜索してくれる。
が、デジタル式の欠点はこの捜索範囲が狭いということだ。
それぞれの機種の捜索範囲はカタログスペック上では、


SOS(90m)>オルトボックスX1、F1(80m)>AB1500(50m)>トラッカー(30m)


トラッカーはデジタル式の代表的な機種だがやはり捜索範囲が狭い。
デジタル式はトレーニングなしでも使えるといううたい文句があるのだが、たとえ埋没者を早く発見しても、掘り出しや、低体温症になっているはずの遭難者の処置なり蘇生なりにトレーニングが不要とはとても思えない。もっともメーカとしては、トレーニングのいらないアバランチトランシーバーを普及させて、たとえまぐれでも遭難者の一命が助かるのならそれはそれで意義はあるのかもしれない。
雪崩事故は、自分たちのパーティーだけが遭うとは限らず他のパーティーの雪崩事故を救難するというケースもある。そういう場合にはデジタル式は有効かもしれない。


雪崩ビーコンには不要論もあるのだが・・・つまり雪崩に遭ってからでは遅く、雪崩を回避することが最も重要だという主張で、これが感情論に発展することもある。もちろん雪崩ビーコンは雪崩から身を守ってくれる御守りになるわけがなく、ビーコンが命を救うのに無力だった遭難は経験したし、またビーコンで命が助かったというケースは身近に知っている。
雪崩ビーコンは雪崩から身を守ってくれる御守りでは決してなく、雪崩事故の、ある状況において助かるかもしれない命を助ける装備であって、やはり雪崩を回避するという姿勢はやっぱり必要だ。


[:W400]
これは世界でいちばん売れてるオルトボックスF1フォーカス