岡本太郎 『明日の神話』

東京都現代美術館へ『明日の神話』を見に行ってきた。

明日の神話』を見て、これは『ゲルニカ』だ、と思った。
原爆の炸裂の瞬間の悲劇と地獄絵図。中央の人間は松明のように燃え上がり、白骨化し、その白い骨は四方へ爆発的に飛び散っていく。炭のように黒くなって燃え上がる無数の人々。逃げ出す動物たち。禍々しい暗雲と核兵器を使用した人間の悪意。
だが中央の白骨化した人間は、燃え上がりながら、命を消滅させながら、生命力を爆発的に発散させているように見える。人間の悪魔性。人間は地獄の悪魔にもなり得る。しかしそれにも負けない高貴さ、気高さを併せ持っている。
人間が核兵器を使用した瞬間、人間は悪魔に魂を売り渡してしまった。自らが悪魔であることを証明してしまった。しかしその瞬間は同時に、それにも負けない人間の気高さを証明するものでもあった。壁画左上に書かれた原子雲は、最初胎児のように小さく描かれ、びっくりした目を見開きながら次第に成長していく。禍々しい力は解き離れたが、力それ自体は赤ん坊のように無邪気で善も悪もない。そう見ると松明となって燃え上がる人々は祭りで踊る人々にも見えてくる。つまりこれは何かの誕生を祝う祭りなのだ。
新しい時代、つまり『明日の神話』は、最悪の悲劇、最悪の惨劇から立ち上がるときに始まるのだ。

明日の神話 岡本太郎の魂〈メッセージ〉

明日の神話 岡本太郎の魂〈メッセージ〉