遡行の旅


黒部ダムから1時間ほど下流へ歩いたところの黒部川
黒部ダムができる前の流れは想像してみる他ない。上流の水の大半は黒部ダムに集められて発電のため地下の水路を流れ下って行くのだから水量はわずか何%か?ともかく両岸の様子を見るに相当な大渓谷だったことが想像できる。なにしろ黒部川北アルプスを縦に真っ二つにしている川である。


近所を流れる荒川を、河口の葛西臨海公園から水源の甲武信ヶ岳まで完全遡行してみようかと思いついて、その考えをもてあそんでいるけれど実行に移していない。河口から甲武信ヶ岳山頂まで歩いた人はいるようだが、上流部は沢通しではなく登山道を歩いているから完全遡行とはいえない。やっぱりそこは沢登りでいかなきゃ。この計画、行程の大半はつまらない車道歩きになるからそれを面白いと思えるかどうかである。沢登りする人はたいてい車道や山の中に延びる林道を忌み嫌うのだが、登山のアプローチに使っておきながら勝手なものである。


山を見ると登りたくなるのが人の性質なら、川を見るとさかのぼってみたくなるのもそうなのかもしれない。映画『地獄の黙示録』も川をさかのぼる物語だった。ある人によると、川をさかのぼる旅は人間の根源に近づく旅なのだそうだ。川をさかのぼる夢を見たら、フロイトユング的な分析ではどういう意味になるのか?