レスキュー訓練まとめ

先日所属する山岳会でレスキュー訓練を行った。これはそのまとめ

■ロープ結束

レスキューに多用する結び方のみ。必須!
基本的な結び方
クローブヒッチ[インクノット]



○ムンターヒッチ[半マスト結び]



○ムンターミュールノット



○ボーラインノット



ヨセミテブーリン[変形ボーラインノット]



○インライン・フィギュア・エイトノット[インライン]



○ダブル・フィギュア・エイト・ループ
(二つの輪が出るエイトノット。輪の強度があがる上、加重がかかった後でも解きやすい)





2本のロープ連結
○両末端のエイトノット
・結束の強度は十分にあり、角にこすれても結束部が引っかかりにくい、解きやすいなどメリットがある。
・末端は30cm以上出す。きっちりと締め上げる。末端はオーバーハンドノットで処理





フリクションノット関係
○クレイムヘイスト ○オートブロックノット ○バックマンノット
 ・どれも巻き数を多くすれば強く効くが、操作性は悪くなる。巻き付けるロープ径に対するちょうどいい巻き数を習得することが必要。いずれも40cm長のスリング(ダイニーマ製のソーンスリング)が最適。
 ・プルージックノットを使うメリットはあまりない。

立ち木へのロープ固定、アンカー作成関係
○立ち木へのクローブヒッチ ○その後のツー・ハーフ・ヒッチ
・立ち木には2回ロープを回すこと → 結び目にかかる力が小さくなる
○流動分散支点、固定分散支点の作成(メインロープで)
 ・ダブル・インライン・フィギュア・エイトループを使用する(2重にしたインライン)。この方法は、各支点に回してきたロープを1箇所にまとめる時にループの長さの調節がやりやすい。従来やっていた変形エイト・ベンドではあらかじめ必要になるループの長さを目測する必要があった。
 ・流動分散支点の場合は、外角を60度以内に押さえる。角度が大きすぎると1つの支点にかかる力が、全体にかかる力よりも大きくなって力の分散という意味にならない。流動分散は、ビレー点を作る時の方法のように“ひねり”を加えない(ロープが流動しなくなるので)。
 ・流動分散の状態で支点位置を調整した後、支点位置の根元を長いスリングで縛り上げることで固定分散支点になる(最初にメインロープにカラビナでスリングを止め縛り上げる)。

■懸垂下降(救助者の加重あり)

・従来だとレッグループ→エイト環小さい輪の位置にカラビナをかけメインロープ2ターンでやっていたが、ビレイループ位置のカラビナの1ターンで十分である。
・ビレイループ位置のカラビナでメインロープを1ターンする。グリップビレイの要領で制動をかける。
・このグリップビレイの位置には、ビレイループよりオートブロックノットをセットしておく。オートブロックノットを握っている状態だと下降する。手を離すとオートブロックノットが効いて自然に止まり、「懸垂下降中の仮固定」になり両手が離せる。下降するにはまたオートブロックノットの位置を握ればよい。
・救助者を背負って懸垂下降する場合は、デイジーチェーンで背負う人と救助者がつながり(振り分け)、デイジーチェーンにエイト環が自由に動くようにセットする。エイト環はあとで操作ができるように手が届く範囲にセットされていること。

■懸垂下降の結び目通過

・ムンターミュールノットで安全環付きカラビナをハーネスにセットする(救助者を背負っている場合は振り分けのデイジーチェーンにセット)。このカラビナでにムンターヒッチで懸垂下降する。ロープの連結部にきたらムンターヒッチをしているカラビナが結び目に当たるまで下降。当たったらそれ以上下降しない(したくてもできない)。両手を離しても大丈夫である。その状態で連結部下のロープにエイト環をセットし、懸垂下降の体勢を整えてから片手で上のムンターミュールノットを解除。エイト環のロープにテンションがかかり下降が続けられる。最初の安全環付きカラビナは連結部に残していくことになる。複数人が続けて懸垂下降する場合は次に下降する人がこのカラビナを回収して行ける(最終的にカラビナ一つだけの残置)。

ライジング(引き上げ)

・1/2システム、1/3システムを習得しよう。最初に1/2システムを試し、力が足りなければ1/2システムを引くロープに1/3システムをセットし、1/6システムに移行する。
・1/5システムなどはカラビナの摩擦の力のロスが大きくなりすぎて現実的に使えない。
・どのシステムを使うかよりもいかに効率よく力を伝えてロープを引くかが重要。そのためには引くロープに自分の体を固定し、頭を下にして斜面を足で蹴って下る。同時に救助者側のロープを手でたぐる(カウンターバランス)。この方法だと1/1で一人でも二人を引き上げることができる。

ライジングシステムのロープのストッパーについて
・ストッパーはメインロープを折り返すカラビナになるべく近い位置に作る。
・ストッパーは従来オートブロックノット単体でやっていたが、これは引き上げた際にロープを折り返しているカラビナに引き込まれてしまう(こうなるとストッパーにならない)。カラビナの前にATC(確保器)をセットし、その先にストッパーとしてバックマンノットをセットする。こうするとロープが引かれた際ATCに当たるので放っておいてもストッパーがカラビナに引き込まれない。
・タイブロック一個でもストッパーになる。ただしロープが引かれるとタイブロックが効かない方向に反転してしまうので元に戻す操作が必要(その操作に一人必要)。

■ロープの張り込みと流星法

・メインのロープは従来、そのロープ自体で1/3システムを作っていたが、別のロープ(ロープ余端)の1/3システムで張り込む方法にする。メインロープが加重で弛んでも張り込み直しやすいため。
・メインのロープはエイト環で確保の状態、別ロープ(ロープ余端)で作った1/3システムで張り込む。1/3システムで引いてメインロープがたるんだ部分はエイト環側のメインロープを引いてたるみを取る。必要な強さまで張り込んだら、エイト環のメインロープを1ターンして仮固定する。
・張り込まずに人間アンカーという方法も使える。このとき張り込むロープは急傾斜の場合に限られる。角度が浅い(水平に近い方)場合、人間アンカーは耐えられない。メインロープの末端に3つ輪を出すエイトノットで、人が4〜5人つながり全体重をかける。この方法は必要時にロープを張り込め、不必要なときはロープを緩められる。
・流星法でロープに乗る人間はスリング(120cm)でチェストハーネスを作り、ぶら下がったとき座るような形になるように胸の位置を持ち上げる。ガイドロープはメインロープに干渉しないようぶら下がるカラビナ(デイジーチェーン)の少し下の位置で。確保はエイト環の”チョイがけ”でロープを一定スピードで流す。

■救急法について

 ・心肺蘇生は、人工呼吸(マウス・ツー・マウス)はやらない方向になってきている。人工呼吸しなくても蘇生率はほとんど変わらないと最近ニュースがあったことを覚えている。心臓マッサージのみで。位置は乳頭のちょうど中間。マッサージのペースは1分間に100回。
・裂傷の手当ては湿潤式の傷パッドというのがあり、傷跡が残らない。消毒液は組織にダメージを与えるので、水道水で洗うのがよい(沢の中ではどうする?煮沸消毒した水って使える?)

■その他セカンドのビレイ方法について

・クイックドローに1枚カラビナを足す「ビエンテ」という方法の紹介。自動的にロックがかかる。ガルダーヒッチに似ている。ロックした後の解除が容易。

心肺蘇生練習用ダミー人形「アニー」ちゃん